〜〜あらすじ〜〜

 

© SPUTNIK OY, 2017

 

内戦が激化する故郷シリアを逃れた青年カーリドは、生き別れた妹を探して、偶然にも北欧フィンランドの首都ヘルシンキに流れつく。空爆で全てを失くした今、彼の唯一の望みは妹を見つけだすこと。ヨーロッパを悩ます難民危機のあおりか、この街でも差別や暴力にさらされるカーリドだったが、レストランのオーナーのヴィクストロムは彼に救いの手を差しのべ、自身のレストランに雇い入れる。そんなヴィクストロムもまた行きづまった過去を捨て、人生をやり直そうとしていた。それぞれの未来を探す2人はやがて“家族”となり、彼らの人生には希望の光がさし始める…。

 

 

フィンランドの名匠アキ・カウリスマキ監督の『希望のかなた』は、2017年のベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞。観客から圧倒的支持を受けました。

 

批評家のみならず、多くの胸に深い余韻を残した本作は、同映画祭で監督賞の栄誉に輝きました✨

 

 

 

カウリスマキ監督は、前作『ル・アーヴルの靴みがき』(2011)で「港町3部作」シリーズと名付けましたが、監督自ら「難民3部作」とネーミングを変え、ふたたび難民問題に向かい合います。

 

 

 

 

そんなカウリスマキ監督、、

文字通りの名映画監督の一人なのですが、彼がどんな経歴の持ち主なのかをまずはザッとご紹介👍

 

 

 

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1957年4月4日フィンランドのオリマティラ生まれ。大学ではコミュニケーション論を学びました。

映画評論家としてキャリアをスタートさせるが、評論のみには留まらず脚本家や俳優、また助監督でも多くの撮影現場に携わります。

1981年には兄のミカ・カウリスマキとともに映画会社ヴィレアルファを設立。

また、センソ・フィルムという配給会社も所有し、一時期はヘルシンキで「アンドラ・カルチャー・コンプレックス」という映画館を運営していました。

1983年に初長編監督作品『罪と罰』を発表。1986年には『パラダイスの夕暮れ』がカンヌ映画祭監督週間に招待され、世界から注目される映画監督の仲間入りを果たします。

日本公開作品では1990年の『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』で注目されて以来、その後のカウリスマキ作品が公開されるようになります。

なかでも『浮き雲』『過去のない男』『ル・アーヴルの靴みがき』などは、日本の映画ファンに注目を受け、熱狂的支持を与える監督となります。

 

 

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『語らず、笑いで包む』

 

 

これぞカウリスマキの怒り! 彼の表現なのです

 

 

 

彼は前作「ル・アーブルの靴みがき」で難民問題を独特のユーモアで演出し近年デンマークを始め北欧内でも難民問題を巡って受け入れ反対運動を起きている状況、そしてシリアのアレッポで起きている惨劇に怒りを表明し、監督最高傑作でないかと思うほど洗練されたドラマを誕生させました。

 

 

本作は、日本映画やハリウッドで作られるホロコースト映画が陥りがちな「台詞で哀しさを表現する」というものを徹底して排除している。まるで絵画のように、そのシーンを観ただけで状況を観客に伝えるのだ。冒頭10分、ほとんど台詞はない。「ル・アーブルの靴みがき」同様、意外なところから難民が現れるところから始まる。目線や風貌だけで、この難民がいかに命がけでフィンランドにやってきたかがよく分かります。

 

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そしてシーンは変わり、妻と別れた男の人生が描かれる。男は鍵を置く。妻を何度も観て家を出てく。別に「出てくぞ!」なんて台詞は必要ない。邦画だったら余計に心情を語ってしまうシーンだが、カウリスマキは男の立ち姿、挙動だけで総てを表してしまうのです。

 

 

そして、難民と男の人生が交互に描かれる。まるで「海は燃えている」を観ているかのよう。現地民の知らぬ世界、それも紙一重しか離れていない場所で壮絶な逃避行が行われているのです。

 

 

 

本作を観ていると、今や心の余裕がなくなり、難民を押しつけ合う先進国に対してカウリスマキが怒りを投げつけているように見えます。この「希望のかなた」では、難民、ホームレス、障がい者たちが貧しいながらも、寄付をしたり、差別や暴力に襲われている人を助けたりする姿が描かれる。それもユーモラスに描くので全く説教臭さがないです。

そして、どんな状態でもしれっと人を助けるシーンは「シンドラーのリスト」を思わせ、そして難民を臨時的に匿う部屋の感じは「アンネの日記」を彷彿とさせられます。第二次世界大戦から半世紀以上も経っているが、現代でも同じ事が起きている。差別やお役所的過ぎる国の中で、ひっそりと生きるしかできない真実がフィンランドにあるんだというカウリスマキの主張に圧倒させられる。

 

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そんな「希望のかなた」ですが、実は本作はもはやコメディですw というか、そう言いたくなるほど作品自体のノリがテーマのわりに軽いです✨笑

 

 

 

まず、なんと言っても、主人公達の心を代弁するように随所でイカしたバンドマンが歌を歌うシーンはこの作品の印象的なシーンであり外すことはできない要素です。バンドマンの中には、フィンランドの人気ロック歌手Tuomari Nurmioや、あの「過去のない男」でも登場したバンド、マルコ・ハーヴィスト&ポウタハウカ(Marko Haavisto&Poutahaukat)も歌います。また、フィンランドで活躍する日本人バンドマンToshitake Shinoharaの渋い曲も、、 どれもほんとカッコイイ。ダサカッコイイ感がヤヴァイのです✨

 

そして、どんな苦境に立たされても、真顔でおかしな事も粛々とする人々にズッキュン心奪われるんですよ。

 

 

 

そしてジェットコースターのように後半畳みかける抱腹絶倒のギャグシーンに、多幸感を得る。難民映画なのに、こんなに笑えて良いのかと後ろめたさを感じるほど面白い!

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今作で主演をはたしたシェルワン・ハジ(写真→) やはり彼の存在感、演技なくしてこの作品は語れません!

彼はシリア出身の俳優で内戦が激化する前の2010年にフィンランドに移住した方です。実はハジさんは難民ではなく、ある女性のためにフィンランドに移住したとのこと。彼自身「ボクは愛の難民さ」と語ってたそうです✨

 

 

そんな彼はここ7年ほど俳優業から離れていたのだが、ある日プロダクションからオファーがあり俳優業を復活させたとのこと。この時点では、まさかアキ・カウリスマキの新作に出るなど思ってもいなかっただけに、監督が明らかになりびっくりしたと語っていました。

そんな彼がシリア難民役を演じたことについて、「緊張と興奮があった」と語っている。憧れのアキ・カウリスマキ監督作に出演した「夢がかなったぞ」という嬉しい気持ちと難民を演じる重い責任に対する恐怖が彼の中にあったようです

 

 

また、シェルワン・ハジは、アキ・カウリスマキについて「中東の、それも中東女性のステレオタイプのイメージを壊したかった」のではと語っている。中東の女性と言えば、ニンジャのように顔を隠し、男に従うイメージが強い。しかし、本作で登場する難民の女性は力強い。

 

 

 

 

それを「死ぬのは簡単。だけど生きたい!」という台詞に込めたのです。

 

 

 

最後に…

 

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本作は難民問題という我々日本人にはとくにわかりにくい問題をスピーディーにキャッチーに且つしっかりとエンタテインメントへと昇華させわれわれを楽しませ、考えさせてくれるカウリスマキ監督だからこそ出来えた作品であります。困っている人に手を差し伸べる そんなシンプルなことがわたしの心をグッと掴むのです。人の善意とは美しいものなのだ。なんて清々しい!