上映期間|8月29日(金)〜9月10日(水)



【INTRODUCTION】
『ハマのドン』松原文枝監督 最新作
【解説】
80 年前の戦時下、国策のもと実施された満蒙開拓により、中国はるか満洲の地に渡っ
た開拓団。日本の敗戦が色濃くなる中、突如としてソ連軍が満洲に侵攻した。守って
くれるはずの関東軍の姿もなく満蒙開拓団は過酷な状況に追い込まれ、集団自決を選
択した開拓団もあれば、逃げ続けた末に息絶えた人も多かった。そんな中、岐阜県か
ら渡った黒川開拓団の人々は生きて日本に帰るために、敵であるソ連軍に助けを求め
た。しかしその見返りは、数えで 18 歳以上の女性たちによる接待だった。接待の意味
すらわからないまま、女性たちは性の相手として差し出されたのだ。帰国後、女性た
ちを待っていたのは労いではなく、差別と偏見の目。節操のない誹謗中傷。同情から
口を塞ぐ村の人々。込み上げる怒りと恐怖を抑え、身をひそめる女性たち。青春の時
を過ごすはずだった行先は、多くの犠牲を出し今はどこにも存在しない国。身も心も
傷を負った女性たちの声はかき消され、この事実は長年伏せられてきた。だが、黒川
の女性たちは手を携えた。
したこと、されたこと、みてきたこと。幾重にも重なる加害の事実と、犠牲の史実を
封印させないために――。
【物語】
「私は昔のことだけは忘れません。
満洲で死ぬか生きるかを問うたんです。」
今から 10 年ほど前、敗戦直後の満洲で起きた性暴力の実態を佐藤ハルエ、安江善子が
自ら告白した。当時、ソ連軍に差し出された女性は 15 人。数えで 18 歳以上の未婚女
性が犠牲となった。
今はどこにもない国、満洲国。岐阜県にある白川町黒川からも佐藤ハルエ、安江善子
を含む 650 人余りの人々が黒川開拓団として海を渡り、丸 5 年その国で生活を送った。
石原莞爾や板垣征四郎ら関東軍幹部が仕掛けた柳条湖事件を発端に満洲事変が勃発。
半年後には満洲全域を関東軍がほぼ手中におさめ、1932 年に満洲国は建国された。 「五
族協和※1」「王道楽土※2」をスローガンにかかげていたが、実権を握った政府の中枢
は日本人だった。
満蒙開拓団は国策として推し進められ、ソ連防衛の兵站の前線として送り込まれた。
しかし、当時のロシア外務省ファイルには、日本から満洲に渡った、地域・世帯数・
人口が事細かに明記されており、黒川の記述もそこにはあった。筒抜けだったのだ。
そして太平洋戦争以降、自体は急変する。1945 年 8 月 6 日、広島に原爆が落とされ、
その 3 日後にソ連は日ソ中立条約を破棄、日本に宣戦布告した。そして、8 月 9 日未
明、国境を越えて満洲国へソ連が侵攻してきた。関東軍は開拓団に知らせることなく
南東に後退。成年男子も徴兵されていたため、当時残されていたのは、女性、子ども、
高齢者がほとんどだった。ソ連の侵攻、そして現地の人びとからの襲撃を恐れた開拓
団は、逃避行の過程で肉体的にも精神的にも追い詰められていった。そんな生死を問
う状況の中、黒川開拓団の人々が助けを求めたのがソ連軍だった。彼らに護衛しても
らうかわりに、15 人の未婚女性がソ連兵の性の接待を強いられることとなった。
作品情報 | 監督:松原 文枝 語り:大竹 しのぶ 撮影:神谷 潤 金森 之雅 編集:東樹 大介 プロデューサー:江口 英明 製作:テレビ朝日 配給:太秦 2025|日本|99 分|ドキュメンタリー |
公式サイト | https://kurokawa-onnatachi.jp/ |