『アダマン号に乗って』(字幕)

上映期間|6月16日(金)〜6月27日(火)

6/16~6/20|15:10~17:10
6/23~6/27|12:40~14:40

【イントロダクション】
本年度の金熊賞をこの作品に贈るのは光栄です。 クリステン・スチュワート(俳優/審査員⻑)

ベルリン国際映画祭でまさかの金熊賞《最高賞》受賞! 日仏共同製作の「優しい」ドキュメンタリー

今年 2 月、第 73 回ベルリン国際映画祭でクリステン・スチュワートら審査員たちが華々しい作品群のなか金熊 賞《最高賞》を贈ったのは、ある 1 本のドキュメンタリーだった。「人間的なものを映画的に、深いレベルで表 現している」と賞賛された本作を手掛けたのは、世界的大ヒット作『ぼくの好きな先生』(02)で知られる現代ド キュメンタリーの名匠ニコラ・フィリベール監督。多様性が叫ばれるずっと以前から、社会的マイノリティーと される存在や価値が共存することを淡々と優しい眼差しで捉え続けてきた。本作には、ニコラ監督と20 年来の 交流を持つ配給会社ロングライドが、『人生、ただいま修行中』(18)に続き共同製作として参加。金熊賞受賞の大 きな反響を受けて、25カ国以上の国々で公開が決定。日本でも、時期を繰り上げて緊急公開されることとなっ た。

みんな違ってみんな良い。 パリ、セーヌ川に浮かぶ、奇跡のような船〈アダマン〉

パリの中心地、セーヌ川のきらめく水面に照らされた木造建築の船に、今朝もひとり、またひとりと橋を渡って やってくる。ここ〈アダマン〉はユニークなデイケアセンター。 精神疾患のある人々を迎え入れ、創造的な活動を通じて社会と再びつながりを持てるようサポートしている。こ の船では誰もが表情豊か。即興のコンサートでフレンチロックを熱唱!ワークショップでは、色とりどりの絵を 描き、カフェでレジ打ちをしてお客さんのお気に入りのカップにコーヒーを淹れる。精神科医療の世界に押し寄 せる “均一化”、“非人間化”の波に抵抗して、共感的なメンタルケアを貫くこの場所をニコラ監督は「奇跡」だと いう。 <アダマン>の日々をそっと見つめる眼差しは、人々の語らう言葉や表情の奥に隠れされたその人そのものに触 れていく。そして、深刻な心の問題やトラウマを抱えた人々にも、素晴らしい創造性があり、お互いの違いを認 め共に生きることがもたらす豊かさを観るものに伝えてくれる。ベルリン国際映画祭最高賞に輝いた本作は、間 違いなく最も「優しい」映画であり、この時代にもたらされた“希望”そのものである。

【アダマンについて】

アダマンはセーヌ川右岸のケ・ドゥ・ラ・ラペ、リヨン駅からすぐのところにある。“デイケアセンター”であり、 パリ中央精神科医療グループの一部だ。このグループには、2 つの CMP(Centres Médicaux Psychologiques: 精神科医療センター)、1 つの移動チーム、かつてシャラントン精神病院として有名だったサン=モーリス総合病 院付属エスキロール精神科病院の 2 つのユニットも含まれる。 ゆえに、ここは孤立した場所ではない。グループを構成するユニット同士がネットワークを形成しているので、 患者と介護者は常に移動して自分の地図を作り、提供されるさまざまな要素の中から自分に合った解決法を見つ けることができる。

アダマンは、セーヌ川に面した大きな窓のある表面積 650 平方メートルの木造建築だ。建築家は介護者やセクタ ーの患者と密に連携して設計を行った。開館は 2010 年 7 月。

フランスの公的な精神科医療はセクターに分かれており、アダマンはパリ中央グループの他の受け入れセンター とともに、パリ 1〜4 区の患者を受け入れている。

毎日通う患者もいれば、時々、定期的あるいは不定期にしか来ない患者もいる。年代も社会的背景もさまざまだ。 一週間の始まりは、その場にいる全員への朝食から。その後、介護者と患者が一堂に会する毎週月曜のミーティ ングが行われる。誰でも話し合いたいことを議題に加えることができ、ニュースが交換され、プロジェクト(観 劇、次回のゲスト、森での散歩、コンサート、展覧会など)が検討される。

ケアチームは、看護師、心理士、作業療法士、精神科医、秘書室、2 名の病院職員、さまざまな経歴を持つ外部 協力者で構成されている。日常生活には常に注意が払われ、患者も介護者も皆が協力して“一緒に作り上げて”い る。

治療的機能にはグループ全体が関与する。肩書、地位、学位、序列、性格、仕事のやり方に関わらず、誰でも関 与することができる。患者がその日バーを担当している人(ケースワーカー、看護師、“単なる”インターン、他 の患者)に重要なことを打ち明け、翌日の診察で精神科医に多くを語らなかったとしても、誰もショックを受け ることはない。ケアチームはバラバラに与えられた情報を結びつける方法を見つけるからだ。

アダマンでは、裁縫、音楽、読書、雑誌、映画上映会、作文、絵画、ラジオ、リラクゼーション、革細工、ジャ ム作り、文化観光など、数多くのワークショップが行われる。しかし患者は、その場の雰囲気に浸かりながら、 ひと時を過ごしたり、コーヒーを飲んだり、歓迎とサポートを感じたりするためだけに参加してもいい。ワーク ショップはそれ自体が目的ではなく、患者が家に引きこもらずに世界と再びつながりを持てるようにするための 名目に過ぎないのだ。

作品情報監督:ニコラ・フィリベール
2022年/フランス・日本/フランス語/109分/アメリカンビスタ/カラー/原題:Sur L’Adamant/日本語字幕:原田りえ
配給:ロングライド 協力:ユニフランス
公式サイトhttps://longride.jp/adaman/