上映期間|9月1日(金)〜9月13日(水)※9月6、7、10日休映
【イントロダクション】
膨大な実話から巧緻に練り上げられた ある一日の物語 すべての人に問いかける 87分の静かな衝撃
ニューヨーク・タイムズスクエアの裏手にある薄汚れたオ フ ィ ス で 、1 8 日 間 と い う 短 期 間 で 撮 影 さ れ た 本 作 は 、 サ ン ダンス・ベルリンを始めとした世界中の映画祭や各メディア によって高く評価された。大物映画プロデューサーの下で働 く 野 心 あ る 若 い 女 性 を 主 人 公 に 据 え 、 彼 女 の 未 来 を 決 定 づ け る か もし れ な い 、あ る 耐 え 難 い 1 日 を 描 い て い る 。
『ジョンベネ殺害事件の謎』(2017)で知られるドキュメ ン タ リ ー 映 画 作 家 の キ テ ィ・ グ リ ー ン は 、 2 0 1 7 年 に 巻 き 起 こった#Me Too運動に自身初の劇映画の題材を見出し、 今日の職場における大きな問題をフィクションの形で掘り 下 げ た 。画 面 の 中 に は 決 し て 顔 を 見 せ な い ボ ス 、そ の 電 話 越 し の 声 は 一 見 ハ ー ヴ ェ イ・ ワ イ ン ス タ イ ン を 彷 彿 と さ せ る が 、 本 作 の ア イ デ ィ ア は さ ま ざ ま な 実 話 に も と づ い て い る 。 英語で匿名の女性を指す “Jane Doe” に由来するジェー ンというキャラクターは、数百にも及ぶ労働者へ対して行 われたリサーチとインタビューによって監督が得た膨大な 知見、とりわけ女性の痛みや混乱の経験から形成されてい る。さらには、ビジ ネストークの断片、キーボードの音、電 話の着信音などに焦点を当てることで、彼女の仕事の無味 乾燥なムードを見事に構築した。
そして、ヒエラルキーの末端で働く人々の代弁者でもあり、現代のジャンヌ・ディエルマンとも言えるジェーンを演 じ た の は 、 い ま 最 も エ キ サ イ テ ィ ン グ な 若 手 俳 優 と し て 急 速に地位を確立しているジュリア・ガーナー。細かな演技の 積み重ねによって、オフィスで働く人間の仕草やクセ、息苦 し い ス ト レ ス そ し て 、ト ッ プ 企 業 に 巣 食 う ハ ラ ス メ ン ト や 搾 取の空気と、末端社員である自らの信念との間の葛藤を巧 みに表現している。
24 時間の間、まるで透明な存在のようにさまざまな暴力 の 矛 先 に な る ジ ェ ー ン 。し か し 、こ の よ う な 扱 い に 慣 れ て いる人間の態度で、彼女は日常的な仕事を淡々とこなして いく。自分の意見はほとんど述べず、寡黙に状況を見つめ る 彼 女 の 目 を 通 じ て 、 観 客 は 自 分 が 同 じ 立 場 な ら ど う す る か 考 え さ せ ら れ る 。 架 空 の 映 画 会 社 の 1 日 が 、ど こ の 職 場 にも存在する、ヒエラルキー最下層の人々に共通する経験 を 浮 き 彫 り に す る 。ジ ェ ー ン が 体 現 す る の は 、彼 ら の 痛 み の蓄積と沈黙の叫びである。また同時に、本作は『SHE SAID/ シー・セッド その名を暴け』(2022)にも連なる、職 場のパワハラや性的虐待を許容し蔓延させているシステム への痛烈な告発である。一つの確信によって、思いもよら な い 自 ら の 立 場 が 明 ら か に な る と き 、彼 女 は ど ん な 選 択 を するのか̶̶静かな衝撃に打ちのめされる87 分。
【ストーリー】
憧れの映画業界、のはずだった――― 新人アシスタントが気付いてしまったのは
しくみ 誰 も が 見 て 見 ぬ ふ り を し て い る 、そ の〈 闇 〉
名門ノースウェスタン大学を卒業したばかりのジェーン (ジュリア・ガーナー)は、映画プロデューサーという夢を 抱いて激しい競争を勝ち抜き、有名エンターテインメント企 業に就職した。業界の大物である会長のもと、ジュニア・ア シスタントとして働き始めてもうすぐ二ヶ月。夜明け前にア
ストリアの自宅を出発し、誰よりも早く出社して誰よりも遅く 帰る毎日。華やかさとは無縁の殺風景なオフィス。仕事と いえば平凡な事務作業ばかりだが、同僚には厄介な仕事 はすべて押し付けられ、会長には気まぐれな要求と暴言を 吐きかけられる……しかし、彼女は自分が即座に交換可能 な下働きでしかないということも、将来大きなチャンスを掴 むためには、会社にしがみついてキャリアを積むしかない
こともわかっている。そんな中、新しいアシスタントとしてア イダホからやってきた若い女性の研修を依頼されるが、彼 女は業界未経験のうえ、会社が高級ホテルに泊まらせてい た。それまでの小さな違和感の一つひとつが確信へと変わ り 、会 長 が 性 的 搾 取 者 だ と い う 事 実 に 直 面 す る ジ ェ ー ン 。 しかし加害者がトップである以上、いったい誰を頼 ればい いのだろうか? 意を決した彼女は、誰にも相談せずにひっ そりとオフィスを抜け出すと、別棟にある人事部を訪問。優 しく迎え入れられるジェーンだったが、話を進めるうちに問 題は一人の権力者ではなく、はるかに大きなものであるこ とに気づくのだった。
作品情報 | 監督・脚本・製作・共同編集:キティ・グリーン 出演:ジュリア・ガーナー、マシュー・マクファデイン、マッケンジー・リー 製作:スコット・マコーリー、ジェームズ・シェイマス、P・ジェニファー・デイナ、ロス・ジェイコブソン サウンドデザイン:レスリー・シャッツ 音楽:タマール=カリ キャスティング:アヴィ・カウフマン 2019年|アメリカ|英語|87分|2:1|カラー|原題:The Assistant 配給・宣伝:サンリスフィルム © 2019 Luminary Productions, LLC. All Rights Reserved. |
出演 | ジュリア・ガーナー、マシュー・マクファデイン、マッケンジー・リー |
公式サイト | https://senlisfilms.jp/assistant/ |