『猫たちのアパートメント』(字幕)

上映期間|6月2日(金)〜6月13日(火)

【Introduction】
猫を通して見えてくる
この社会の変化と私たちのこれから
このネコたちは、いつもそばにいるご近所さん
ほどよい距離で見守ったり 見守られたり

ソウル市内・江東区のかつてアジア最大と呼ばれたマンモス団地。老朽化で再開発が決まり、少しずつ住民の引越しや取り壊し工事が進んでいる。そこには住民に見守られて250匹の猫たちが暮らしていた。猫たちのこれからはどうなるのか?猫と住民によるお引越し大作戦が始まる。団地に住むイラストレーターや作家、写真家などの女性たちが中心となって活動する遁村トゥンチョン団地猫の幸せ移住計画クラブ>(略称<トゥンチョン猫の会>)。住民のさまざまな意見を聞く会を催し、猫たちの顔を見分けるために写真を撮り、イラストを描いてパンフレットを作る。猫たちを再開発地域から安全な場所に移住させる。そんなささやかな営みから、猫という存在を通して、私たちが暮らす街や社会の矛盾や変化、未来へのヒントが見えてくることだろう。都市空間における生態系、アニマルライツ、環境といったテーマも盛り込み、この社会を幅広く考察する。猫を人間の対等なパートナーとして位置づけることで、都市の生態系の問題に対するさまざまな考え方に目を向けさせる作品だ。

【トゥンチョン団地とは?】
ソウル市の南東の端に位置し、当時、政府が進めていた大規模な住宅供給政策の一環として1980年に竣工。およそ18万坪の敷地に143棟が建てられ、5930世帯が暮らしていた。広大な敷地に10階建て以下の低い団地が建ち並び「マッチ箱団地」と呼ばれていた。
建築から20年ほど経った2000年代初めに再開発をめぐる議論が始まり、 2003年に再開発推進委員会が設立された。この団地は、広い敷地に十分な間隔を置いて低く建てられていたため「居住性」の面では快適だった。しかし、再開発を推進する人たちは、そのメリットについて「事業性」という観点から違う見方をしていた。 ソウルでほぼ唯一残った低密度の団地は、再開発すれば収益性が高かった。再開発組合が設立されてから、団地は急速に老朽化していった。再開発するためには、わざとてでも古く見せなければならず、多くの人が自分の家や近所の手入れをしなくなった。再開発は非常にゆっくりと、しかし着実に一歩ずつ進められた。
2017年に再開発が決まり、2021年末に撤去が完了した。
本作にも登場する住人のイ・インギュさんは再開発が具体化していると聞いた時、子供の頃からの全ての思い出が詰まった故郷が跡形もなく消え去るとは、とうてい信じられず、全てが無くなってしまう前に、少しでも記録を残しておくために、2013年に小さな個人の出版物とフェイスブックックのぺージを作って『アンニョン!遁村団地』というプロジェクトを始めた。
消え行く団地の記録は、その後も続きこれまで4冊の本が出版され、『猫たちのアパートメント』のほかに『家の時間(A Long Farewell)』 (2017年/ラヤ・キム監督)というドキュメンタリー映画も作られた。
(「Koreana」2020年春号より抜粋)

作品情報監督:チョン・ジェウン
音楽:チャン・ヨンギュ
撮影:チャン・ウーイング/チョン・ジェウン
韓国/2022/88分/韓国語
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出演(猫)コンスン、トゥンイ、パンダル、カミ、イェニャン、ノレンイ
キム・ポド、イ・インギュ
公式サイトhttp://www.pan-dora.co.jp/catsapartment/