『ポラン』監督舞台挨拶

<中村洸太監督 舞台挨拶>

日時|11月10日(日)本編14:15〜/舞台挨拶15:35〜
場所|豊岡劇場 
料金|鑑賞料金のみ
予約|こちら

※当日チャイの出店が決まりました!
出店|Hüttea(ヒュッティー) @huttea_spice_chai
姫路を拠点に間借りやイベント出店で活動しているチャイ屋さんです!

<中村洸太監督 プロフィール>

中村洸太
1998年生まれ、東京都出身。立教大学社会学部在学中、映画サークルで自主映画制作に携わるようになる。本作の短編版『最終頁』(2021年)は、英国映画協会主催のBFI Future Film Festivalで国際映画賞にノミネートされたほか、CineYouth Festivalでドキュメンタリー映画賞を受賞、シカゴ国際映画祭で上映された。現在は京都大学大学院に所属、映画研究を専攻している。『ポラン』は長編初監督作品。

ある古書店の予期せぬ閉店、そしてそれから——

■ イントロダクション/あらすじ
35年間にわたって人々に愛されてきた、東京郊外の古書店「ポラン書房」。コロナ禍中の2021年、書店を経営する石田恭介と石田智世子は閉店を告知する。営業最終日に向けて、2人はこれまで通りの営業を続けながら、着々と準備を進める。そんな中、店員の南由紀は長年の夢を叶えるため、ある決断をする——。ポラン書房に生きる人々の閉店までの日常とその後の軌跡を静かに記録したドキュメンタリー。

■ Director’s Note: ポラン書房を撮りながら

 ポラン書房は、幼い頃から馴染みの「そこにあるのが当たり前」な「街の古本屋さん」でした。閉店することを知ったのは、新型コロナウイルスのパンデミックが始まってから1年後、2021年の1月のことです。この突然の知らせを聞き、迷路を思わせるあの空間を映像として記録しておかなければならないという思いに駆られました。
 ありがたいことにすぐに撮影の許可をいただくことができ、目の前で起きる出来事を出来る限りカメラに記録していきました。撮影を続けていると、2月7日の閉店日に向けて、毎日次々と思いも寄らぬことが起こり始めました。ポラン書房という空間のなかで、働かれている方、常連の方、閉店を機にはじめて訪れた方など、様々な人々の思いが交錯していき、カメラの前で自然に物語が展開していったのです。ポラン書房はまるで、外の世界から店の中まで、あらゆる物語を引きよせる「磁場」のような空間でした。私自身もその中に身を置き、時にはそれに巻き込まれながらカメラを回しました。おそらくこの物語の磁場こそが、多くの人々を魅了してきたポラン書房の魅力だったのでしょう。撮影は、店舗がスケルトン、すなわちコンクリート剥き出しの空きテナントとなるまで、そしてポラン書房で働いていた方々が次の道へと進むまで続けました。
 コロナ禍には、テレビや新聞で感動的な「閉店の物語」が数多く報じられました。それらは大抵、閉店日で終わります。撮影しながら、撮れた映像を見直しながら、ポラン書房の記録はそうして忘れ去られていってしまう「閉店の物語」へのささやかな抵抗となるのではないかと考えました。「閉店の物語」から捨象されかねない、ポラン書房という「磁場」に集まってしまった人々やモノの持つ記憶や感情を掬い上げたいと強く思うようになったのです。
 この映画が、ポラン書房に出会い、棚の間をさまよい歩き、そしてそれぞれの「居場所」へと思いを巡らせる時間になることを願っています。

【コメント】

■ 小森はるか(映像作家)
中村さんのカメラには無くなっていくものを写す節度がある。最後の最後に行き先のなくなった古本、壁、看板。そういうものたちを切り取る眼差しは、寂しさよりも、どこか還っていく先があると信じる人たちの想いを掬い取っている。「終わり」ではなく「巡り」の中にあるポラン書房がしっかりと残された。それは本当に絶やしてはならないものを気づかせてくれる。

■ 山本善行(古書善行堂店主)
街の灯りがひとつ消えていく寂しい様子を、私が古本屋だということもあり、自分の店の行く末も考えながら観ました。「探す楽しみ、出会う喜び」の場所をお客さんと共に作っていくポラン書房さんが、時計のネジを巻き、本を拭き、値段を付け、本を縛る、そんな毎日の繰り返しをいかに楽しんでおられたか、しみじみと伝わって来ました。

■ チョン・ジンス(全州国際映画祭プログラマー)
閉店セール、在庫の梱包、長年使われてきた本棚や什器の解体が、ゆったりとした息づかいで描かれていく。小さな店内をぎっしりと埋め尽くしていた本が消えていくさま、本棚がひとつひとつ取り壊されていく姿は、なぜこんなにもやるせないのだろうか。