『ぼくたちの哲学教室』(字幕)

上映期間|6月30日(金)〜7月11日(火)

《6/30~7/4》12:40~14:35
《7/7~7/11》10:15~12:10


【イントロダクション】
やられたら、やりかえす? それでいいの?

「平和の壁」に分断された街、北アイルランド・ベルファスト。 不安定で不透明な世界を生きる子どもたちとケヴィン校長の「対話」の授業。

北アイルランド、ベルファストにあるホーリークロス男子小学校。ここでは「哲学」が主要科目になっている。 エルヴィス・プレスリーを愛し、威厳と愛嬌を兼ね備えたケヴィン校長は言う。「どんな意見にも価値がある」 と。彼の教えのもと、子どもたちは異なる立場の意見に耳を傾けながら、自らの思考を整理し、言葉にしていく。 授業に集中できない子や、喧嘩を繰り返す子には、先生たちが常に共感を示し、さりげなく対話を持ちかける。 自らの内にある不安や怒り、衝動に気づき、コントロールすることが、生徒たちの身を守る何よりの武器となる とケヴィン校長は知っている。かつて暴力で問題解決を図ってきた後悔と挫折から、新たな憎しみの連鎖を生み 出さないために、彼が導き出した1つの答えが哲学の授業なのだ。

北アイルランド紛争によりプロテスタントとカトリックの対立が長く続いたベルファストの街には「平和の壁」 と呼ばれる分離壁が存在する。1998 年のベルファスト合意以降、大まかには平和が維持されているが、一部 の武装化した組織が今なお存在し、若者の勧誘に余念がない。争いの記憶は薄れやすく、平和を維持するの は簡単ではない。その困難はケヴィン校長と生徒たちの対話の端々にも現れる。宗教的、政治的対立の記憶 と分断が残る街で、哲学的思考と対話による問題解決を探るケヴィン校長の大いなる挑戦を映画化したのは、 アイルランドで最も有名なドキュメンタリー作家のナーサ・ニ・キアナンと、ベルファスト出身のデクラン・ マッグラの二人。およそ 2 年に及ぶ撮影期間中にパンデミックが起こり、インターネット上のトラブルという 新たな問題が表面化するなど、子どもをめぐる環境の変化も捉えている。ケヴィン校長と生徒たちによる微笑ま しくも厳粛な対話がニコラ・フィリベールの『ぼくの好きな先生』を彷彿とさせ、国内外の映画祭で多くの 賞を受賞した注目作!

■北アイルランドについて

イギリス(連合王国)を構成する一地域でアイルランド島の北東部を占める。1920 年代にアイルランドがイギ リスから独立し、北アイルランドと分離された。それ以来、プロテスタントとカトリックとの間で宗教的、政治 的対立が繰り返され、1960 年代後半からは武力闘争化し、多くの命が失われた。1998 年 4 月 10 日にベルファ スト合意が締結されたが、暴力が完全に鎮火したわけではなく、現在も街の至る所にプロテスタント地区とカト リック地区を隔てる分離壁(通称「平和の壁」)があり、その周辺では時折衝突が起こっている。首都であるベル ファストには人口の約 4 分の 1 が集中する。

■ホーリークロス男子小学校

ベルファスト市北部、アードイン地区の中心地に位置するカトリック系の小学校。4 歳から 11 歳までの男子が 通う。密集する労働者階級の住宅街に北アイルランドの宗派闘争の傷跡が残るこの地域は混沌とした衰退地区で あり、リパブリカンとユニオニスト(注 1)の政治的対立により、地域の発展が遅れている。犯罪や薬物乱用が 盛んなこの街の絶望感は、ヨーロッパで最も高い青年や少年の自殺率に反映されている。学校を囲む高い壁には 鉄条網が張られ、壁には政治的な落書きや壁画が描かれている。2001 年には姉妹校のホーリークロス女子小学 校の子どもたちが地元のロイヤリストに通学路で脅迫される事件が起き、世界中のメディアで報道された。この 事件によって、ホーリークロス男子小学校の教師も殺害予告を受けることとなった。

(注 1) アイルランド全島による共和国【リパブリック】独立派と、北アイルランドとブリテンの連合【ユニオン】維持派

作品情報
監督:ナーサ・ニ・キアナン、デクラン・マッグラ

2021/アイルランド・イギリス・ベルギー・フランス/英語/102 分/カラー/16:9/5.1ch/ドキュメンタリー 原題:Young Plato 日本語字幕:吉田ひなこ 字幕監修:西山渓 後援:駐日アイルランド大使館/ブリティッシュ・カウンシル カトリック中央協議会 広報推薦 配給:doodler 配給宣伝協力:エスパース・サロウ 宣伝:リガード
出演ケヴィン・マカリーヴィーとホーリークロス男子小学校の子どもたち
公式サイトhttps://youngplato.jp/