旅の終わりのたからもの【字幕】

上映期間|2月13日(金)〜2月25日(水) 

【INTRODUCTION】
民主国家としての土台を築いていた激動の時代である1991年のポーランドを舞台に、NYで生まれ育った娘と、約50年ぶりに祖国に戻った父が繰り広げる異色のロードムービーが完成した。第74回ベルリン国際映画祭でプレミア上映され、各国のメディアらに広く感動の輪を広げたのは、全編を貫くユーモアと前向きなテーマ。全くかみ合わない父と娘が、相手の言動に容赦ない辛口のツッコミを連打し笑いを誘う珍道中かと思いきや、それぞれの心の傷にも鮮やかに光が当てられ、封印してきた過去と向き
NYで生まれ育ち、仕事でも成功しているはずなのにどこか満たされない心を抱える主人公ルーシーを演じるのは、TVシリーズ「GIRLS/ガールズ」の製作・主演・監督・脚本を務めたレナ・ダナム。20代女性の飾らない姿を描き、“キラキラしていない「セックス・アンド・ザ・シティ」”として人気を博し、エミー賞にノミネートされ、ゴールデン・グローブ賞を受賞した。本作でも一向に効果のないダイエットに振り回され、別れた夫を忘れられず夜中に無言電話をかけてしまうなど、ダメな自分をごまかさずおとしめずまっすぐに見つめる姿が、生きづらい今の時代に日々あがく私たちの肩の力を抜いてくれる。

ホロコーストを生き延び、今や人生を謳歌する奔放なルーシーの父・エデクには、『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』、『ホビット』シリーズのスティーヴン・フライ。英国の国民的俳優であると共に、作家、ジャーナリスト、コメディアン、司会者、ナレーター、映画監督としても活躍。メンタルヘルスに関する啓発や環境問題、慈善活動への貢献が認められ、ナイトの称号を授与された大物だ。自由奔放な言動で出会った人たちを魅了する陽気でチャーミングな顔と、その下に隠す激烈な痛みを体現。亡き父のコートを抱きしめるというワンカットだけで、ホロコーストの残酷さをあぶり出した。

原作はホロコーストを生き抜いた父を持つオーストラリアの著名な作家、リリー・ブレットが実体験をもとに書き上げた小説「Too Many Men」。監督は2024年にヴェネチア映画祭審査員も務めたドイツの俊英、ユリア・フォン・ハインツ。ハインツ自身もホロコースト生存者の孫で、原作に心酔して映画化を実現させた。

父は娘を悲しみに巻き込むことが怖かった。娘は父の苦しみを白日のもとにさらす勇気がなかった。そんな思いやりが、真の愛を遠ざけることがある。ちぐはぐで痛くて、笑いながら泣きたくなる旅のおわりに、二人が見つけた“たからもの”とは──?

合うことで、未来へと新たな一歩を踏み出す姿が描かれる。さらに深い共感を呼んだのは、ホロコーストへの今日の問題としてのアプローチ。生存者の娘を主人公に据えて、戦争未体験の世代にも落とす影にフォーカスすることで、今を生きる私たちの物語として胸に迫る作品に仕上げることに成功した。

【STORY】
ニューヨークで生まれ育ったルーシーは、ジャーナリストとして成功しているが、どこか満たされない想いを抱えていた。その心の穴を埋めるため自身のルーツを探そうと、父エデクの故郷ポーランドへと初めて旅立つ。ホロコーストを生き延び、その後決して祖国へ戻ろうとしなかった父も一緒だ。ところが、同行したエデクは娘の計画を妨害して自由気ままに振る舞い、ルーシーは爆発寸前。かつて家族が住んでいた家を訪ねても、父と娘の気持ちはすれ違うばかり。互いを理解できないままアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所を訪れた時、父の口から初めて、そこであった辛く痛ましい家族の記憶が語られるが──

作品情報監督:ユリア・フォン・ハインツ
出演レナ・ダナム スティーヴン・フライ
公式サイトhttps://treasure-movie.jp/