





『今は昔、栄養映画館の旅』竹田正明監督 舞台挨拶レポート
6月28日、『今は昔、栄養映画館の旅』上映後、監督・撮影・編集を務められた竹田正明監督をお迎えし、舞台挨拶を開催しました。
本作は、柄本明さん率いる劇団東京乾電池が全国24館のミニシアターを巡った朗読劇ツアーに密着したドキュメンタリー。舞台裏だけでなく、それぞれの街で映画館が果たしている役割、人とのつながりまで映し出した作品です。
冒頭、竹田監督はご自身について紹介してくださいました。
2001年から25年間助監督として映画づくりに携わり、荒井晴彦監督や李相日監督作品など数々の現場を経験。そして本作が長編監督デビュー作となります。
「本来は劇映画でデビューする予定でしたが、ご縁があってこの作品を撮ることになりました。結果的に、この作品が最初の監督作になって本当に良かったと思っています。」
そう穏やかに語る姿がとても印象的でした。
「映画館って、生き物みたいだ」
舞台挨拶で何度も語られたのが、この言葉でした。
これは旅の初日、柄本明さんが口にした言葉だそうです。
竹田監督は本日鑑賞中、ある瞬間に鳥肌が立ったと振り返ります。
豊岡劇場がスクリーンに映った瞬間、それまで穏やかだった客席の空気が一変したそうです。
「皆さんの集中なのか、この映画館自体の集中なのか分からないけれど、空気がピンと張りつめたんです。」
「ここにいる皆さんだけじゃない。映画館そのものが映画を観ているような、不思議な感覚がありました。」
さらに舞台挨拶終了後にも、
「映画館が感動してくれているように感じた。」
という言葉を何度も口にされていました。
映画館を建物ではなく、一つの”生き物”として感じたという監督の感覚は、来年100周年を迎える豊岡劇場にとって、何より嬉しい言葉でした。
記録映画だからこそ残せたもの
今回の作品について、監督は
「これは劇映画ではなく記録映画です。」
と話されました。
2025年5月、その時そこにいた柄本明さん、劇団東京乾電池の皆さん、映画館で働く人たち、お客様。
その”今”を残すことこそ、この映画の役割だったと言います。
実際、撮影からわずか一年で作品に登場する映画館の中には閉館した館もあります。
だからこそ、
「10年後、20年後には、この作品は今とはまったく違う価値を持つ。」
という監督の言葉には、大きな重みがありました。
映画館は街の文化そのもの
全国のミニシアターを巡った監督は、地方の映画館についてこんなことを話してくださいました。
「東京の映画館とはまったく違いました。」
「その街に映画館があること自体が文化なんです。」
「豊岡劇場のような映画館は、その街にとって本当に大切な場所なんだと感じました。」
映画館は映画を上映する場所であると同時に、人が集まり、街の記憶を受け継ぐ場所。
その言葉は、日々豊岡劇場を守り続ける私たちにとって、大きな励ましとなりました。
お客様との温かな時間
質疑応答では、お客様からも素敵なお話を聞かせていただきました。
「90歳の母が、自分が映画に映るなんて夢にも思わなかった。」
「去年は自分の足で来られたけれど、今年は車椅子。それでも映画館に来られて本当に良かった。」
クラウドファンディングで整備したバリアフリー設備への感謝のお言葉もいただき、会場全体が温かな空気に包まれました。
また、
「豊劇を続けてくださってありがとう。」
という言葉もいただき、胸が熱くなりました。
映画を上映することだけではなく、この場所を守り続けることにも意味があるのだと改めて感じた瞬間でした。
「映画は届けるまでが映画」
最後に竹田監督は、ご自身にとってこの作品がどんな意味を持ったのかを語ってくださいました。
助監督として長年映画を作ってきた中で、完成した作品が映画館で上映され、お客様へ届く瞬間をこれほど近くで感じたのは初めてだったそうです。
「映画を作るだけではなく、お客様に届けるまでが映画なんだと知ることができました。」
映画館で働く私たちにとって、この言葉は何より嬉しい贈り物でした。
映画館も、この映画を観ていた。
舞台挨拶が終わった後も、監督との映画談義は尽きることなく続きました。
「映画館が喜んでくれている。」
「映画館が感動してくれている。」
そんな表現を何度も口にされた竹田監督。
私たちも、豊岡劇場にはこれまでこの場所を守ってこられた方々の想いが息づいていると感じながら日々運営しています。
だからこそ、この場所で『今は昔、栄養映画館の旅』を上映し、竹田監督とこの時間を共有できたことは、来年100周年を迎える豊岡劇場にとっても、忘れられない一日となりました。
映画館は、映画を上映する場所。
それだけではありません。
人と人が出会い、街の記憶が積み重なり、誰かの人生の一場面になる場所。
そんな映画館の魅力を改めて教えていただいた、かけがえのない舞台挨拶でした。
竹田正明監督、ご来場いただいた皆さま、本当にありがとうございました。